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南予支部青年部から、熱いメッセージが届きました。

 

 

「愛媛県整備振興会南予支部青年部 視察研修報告書」

 

南予支部青年部長  山口 秀二 

 

研修日:平成27年1月17日(土)~19日(月)

研修先:京都府久世郡 KTC ものづくり技術館

参加者:18名

研修目:KTC本社及びものづくり技術館において、製品製造工程の視察、研修

 

バスにてKTC本社に到着。予約時間よりも早く着いてしまったが、担当者の方の計らいで時間前倒しでの研修が始まる。

まずは、ものづくり技術館にてKTC(京都機械工具株式会社)の設立から今日までの変遷、ものづくり技術館オープンに至るまでの社員さん達の熱意の説明を受ける。KTCの設立は1950年、同年トヨタ自動車の車両工具に採用されてからは今日までの日本の自動車社会を支えてきた国内工具メーカー最大手である。当然研修に参加したメカニック全てがKTCの工具を所有しており、ものづくり館1階に並んだ3000を超える工具の中には私が所有している工具がいくつもあった。

会社設立50周年を記念して2003年に完成したものづくり技術館は、建設にあたりエントランスから屋上まで、社員の皆さんのこだわりが敷き詰められている。入館者来場の際、雨に濡れない為の工夫や、当時では珍しい屋上緑化などの細かい工夫や思いやりは、精密で使いやすい工具を作り続けてきた会社の社風が見て取れる。さらに建物内すべてに細かく担当者を決め、各々が責任をもって、任されたエリアの清掃や管理をしているとの事。中でも1階の工具ショールームは圧巻で、壁に綺麗に並べられた工具を眺めているだけでうっとりしてしまう。

ものづくり技術館をひととおり観覧の後、私達はヘルメットとイヤホン型レシーバーを渡される。いよいよ製造現場の見学に移る、製造過程は行程毎に工場が別れており、まず案内されたのは機械加工の工場だった、広い敷地内には数々の切削機械が並び、そのほとんどがコンピュータ管理されていて、思っていた以上に作業員は少ない。だが金属を削った細かいカスや油の臭いから、工具の最終的な整形が行なわれているのが感じ取れる。全てが近代化されているようにも思われたが、一部昔ながらの卓上ボール盤もあった。聞くと創業当時からのものらしく、60年以上も使い続けているとは驚きだ。

次に案内されたのは熱処理工場。ここからは火を伴う作業の為か、ユニホームの色もオレンジ系に変わっていた。ガイドの方が安価な工具との違いを製造過程から説明されていたが、私達は使用過程の角度から知っている。安価なものはすぐ磨耗したり、折れたり、精度が悪かったり。
「焼きを入れ、ゆっくり戻すことで固さと粘り強さの両方を持ったKTCの工具が出来るのです。」そう教えてくれたガイドの方の自慢そうな顔が、とても印象的だった。

続いて鍛造行程、1000度に加熱された材料を1000トンのハンマーで一機に叩く。円柱状の真っ赤な金属が数回のハンマリングで整形されてく様子は何とも異様で、さらに工場内に響く打音はイヤホンからの声が聞こえなくなる程大きい。だが作業員は素早く、確実に整形を行なっていく。一歩間違えたら大事故に繋がる現場で、まるで餅をつくように、素早く酸化皮膜を取り除き、金属をセットしたと思えばすぐに1000トンのハンマーが落ちてくる。おそらくモタモタして温度を下げてしまうと良品にならないのだろう。ここの現場で一人前になるには、最低でも5年から7年掛かると聞いて、その手際の良さに納得した。ただ残念ながら一番楽しみにしていた冷間鍛造は見学できなかった。

最終工程はバレル研磨とメッキ処理。セラミック製の研磨石の中で数時間磨かれた後、メッキ処理が行なわれる。研磨後のソケットが詰まれていたが、もうそのまま製品になるんじゃないかと思う程表面が円滑で、上級グレードのネプロスになると通常の2倍ほど研磨の時間をかけるという。メッキ行程は、私自身が電気メッキの仕組みを分かっていなかった事もあって、ガイドの説明もしっかりとは理解出来なかったが、工場内でのメッキ後の製品の扱いは、貴金属でも取り扱っているのではないかと思う程丁寧で美しい。だが最終段階で少しでも不良があると、製品にはならない。品質管理の徹底とはここまでして初めて言えるのだろう。

最後に金型の製造工場も見学した。工具メーカーで金型まで製造しているのは世界でも珍しいらしく、ここが完全一環生産体制の核になる部分。60サイズバッテリーくらいの金属の塊の重量は350キロ以上あり超高額。よって輪郭が磨耗によって磨り減っても廃棄はせず、一旦表面をフラットな状態に戻してから、また型を作るようだ。一つの鍛造製品に上下一ずつと考えると、金型の数は相当なものになるだろう。軽い気持ちでKTCの営業マンに「新しい工具を作ってくれ。」などと言うのは、控えたほうが良さそうだ。

以前先輩メカニックに「部品をバラしているのはお前じゃない、工具だ!」と言われた事がある。どんなに熟練メカニックでも、素手ではフロントのナンバープレートさえ外せない。だから工具を大切にして、より多くの工具を持てということを教わった。今回の視察で、工具を使う人間が工具を作る人間達に触れる事が出来た。毎日何気なく手にする無機質な工具一つ一つに、たくさんの想いが詰まっている事を教わり、そしてその想いを引き継ぐ事で、私達メカニックは、より安全で正確な整備が出来るのではないかと思う。視察研修を終えて、今年は『工具を無くさない』という目標を掲げて、レポートを締めくくる事にする。

 

↓↓ 真剣な表情でガイドの話を聞いている(?) ↓↓
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↓↓ 整然と並べられた工具 ↓↓

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↓↓ 最後に全員で記念撮影 ↓↓

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